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【九森信造】枚方にTSUTAYAが帰ってくる!【枚方三部作】

   ↑  2015/01/01 (木)  カテゴリー: 九森信造
「楽しいことに用がある」

私が初めて心を動かされたキャッチコピーはこれでした。何より、私のふるさとである枚方発祥の企業がこのコピーを用いていたことが嬉しかったことを覚えています。


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1983年に枚方で産声を上げた蔦谷書店は30年の時を超え、TSUTAYAとなり、全国にチェーンを持つ企業となりました。

東京は代官山の旗艦店が話題を集め、佐賀県は武雄市の図書館がマスコミの注目を浴び、枚方とTSUTAYAの縁は「創業の地」以外何も残っていないように、少なくとも一市民としては感じていました。

そんな枚方にTSUTAYAが帰ってきます。その意義を、CCC(TSUTAYAの運営会社)社長、増田宗昭氏の『知的資本論』をもとに探ってみようと思います。

「サードステージ」を勝ち抜くために

増田氏は今の消費社会を「サードステージ」と名づけています。

「ファーストステージ」はモノが不足していて、モノを作れば売れる時代。日本で言えば、戦後まもなくのイメージでしょうか。

そうして、ある程度モノが満たされると次は、モノを集めた場所、プラットフォームが重要になってくる。それが「セカンドステージ」だそうです。プラットフォームは百貨店やディスカウントショップ、ネットでは楽天市場やアマゾンなどのイメージでしょう。

「サードステージ」はプラットフォーム自体に価値があるのではなく、顧客にとって何らかの「価値」を提案することが重要だそうです。その「提案」こそが「デザイン」だと増田氏は述べています。

「暇つぶし」を売る時代

増田氏は本書の中で、「セカンドステージ」までの利便性を追い求めた消費だけでは幸福になりづらいと述べています。言うまでもなく、増田氏は「サードステージ」には人々を幸福にする力があると思っているのでしょう。

しかし、私は、もう少し違った考え方をしています。乱暴ではありますが、あえてわかりやすく、「セカンドステージ」までを「20世紀型」、「サードステージ」を「21世紀型」と名づけて対比してみましょう。

「20世紀型」はモノやサービスが便利になって、時間の余裕が生み出されていく消費でした。掃除という家事だけを見ても、ほうきから掃除機、充電式クリーナー、さらにはルンバといった自動ロボット型掃除機まで。その便利さを買うために、人は朝から晩まで働き、時間を換金して、暇を作ってきたわけです。

そうして便利になった結果、人々は余った時間を何に使うか、つまり「暇つぶし」に戸惑うようになります。次第にモノづくりよりも「暇つぶし」のコンテンツを提供する産業が注目されるようになりました。

20世紀までは無料で24時間アクセスできるテレビが「暇つぶし」のコンテンツとして圧倒的な地位を占めていましたが、携帯電話やスマートフォンの普及につれて、余った時間を使う「暇つぶし」の主役にウェブ上のサービスが台頭してきました。

上に述べた「20世紀型」の帰結として「21世紀型」は消費者に対していかに「暇つぶし」を提供するかが重要となりました。パズドラなどの課金型オンラインゲームなどはまさにその典型だと言えるでしょう。

無限の「20世紀型」、有限の「21世紀型」

さらに言えば、「20世紀型」と「21世紀型」の大きな違いは需要が有限か無限かという点です。「20世紀型」の場合はイノベーションが続けば、理論としては無限に需要が創出できます。一方で、「21世紀型」は、「暇」つまり「個人の時間」がイコール需要です。これに関しては、1人当たりの時間は1日24時間と定められており、経済成長で増やすことはできません。

「21世紀型」で重要なことは、顧客の「暇」を囲い込むことです。ライバルには顧客の「暇」を取り合う全て、ゲームやテーマパークだけでなく、学校や職場なども含まれるかもしれません。

増田氏が示す幸福は、この「暇」を囲い込んだ上で、いかにして充実させるかということにかかっています。「暇」を消費するだけでなく、より質の高いものにすることを本書では「自分への投資」という言葉で表現しています。

「サードステージ」とは、あくまでも「21世紀型」のルールの中で、充実した「暇つぶし」を手に入れることができる社会だと言えます。

この状況に対して、TSUTAYAは「コンシェルジュ」と「ビッグデータ」を使いこなし対応するそうです。

「顧客」を囲い込む

TSUTAYAが用いる「ビッグデータ」はTポイント会員のデータです。ポイントサービスを用いて、5000万人のさまざまなデータを用いた統計分析を行っていきます。その中から、教養をもった「コンシェルジュ」がさまざまなライフスタイルを提案する、つまり、「顧客」1人ひとりの時間の使い方を提案していくわけです。

確かに今年の3月、BABYMETALの武道館ライブを見に行った際、代官山のTSUTAYAの視察に行ったところ「富山フェア」が行われていました。推測ではありますが「ビッグデータ」からトレンドの「富山」を選択して、「コンシェルジュ」の“教養”から生まれる多種多様なアイデアを代官山に並べたのでしょう。

「居心地」のよい場所

本書によれば、書籍や映画を購入するのは、そのモノを買うのではなく、作品に影響される自分への投資なのです。つまりライフスタイルの変化を買っているのです。

そして、コンシェルジュの「提案」を受け、「どういう自分になりたいか」をのんびり選択できる場を作ることが重要だといいます。

極端に言えば、何の目的もなく、ぶらりと来ても、1日時間をつぶすことができる「居心地」の良い空間を作ることこそがTSUTAYAの使命なのです。

確かに代官山のTSUTAYAに行った際も、増田氏が「森の中の図書館をイメージした」というように、いい意味で時間に追われていない、ゆったりとした空間で利用者が思い思いの時間を過ごしていました。

少し、実務よりの話になりますが、小売業の売上を上げる方法として、店での滞留時間を延ばす方法があります。例えば、生活必需品や生鮮食品を店の奥に配置したり、ドンキ・ホーテのように店の棚配置を入り組んだものにしたり、さまざまな工夫が行われています。

同じように、TSUTAYAの「居心地」の良い空間は顧客の滞留時間を延ばすことになりますが、商品の配置による構造的なものではなく、顧客が自発的に滞留するという点が大きな違いだといえるでしょう。

「ぶらりする街」

話をはじめに戻しまして、2016年、枚方にTSUTAYAが帰ってきます。TSUTAYAを中心に考えたとき、京阪枚方市駅前は「ぶらりする街」になるかもしれません。

当てもなくぶらりとすれば、新しい出逢いが待っている。それは人かもしれないし、書籍かもしれないし、もっと違ったものかもしれない。そして、出逢いを経験した人は顧客となり、リピーターとなっていくでしょう。

大事なことは「何か面白いことに出会いたい」という私たちの気持ち、そして、「これは面白い」と感じることのできる感性といえるかもしれません。

最後に、増田氏が創業当時に書いた文章の一部を引用して筆を起きたいと思います。

「若者文化の拠点として、枚方市駅からイズミヤの通りがアメリカの西海岸のようなコミュニケーションの場として発展する為の起爆剤になりたく思う」


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(記事編集) http://buraihamegane.jp/blog-entry-75.html

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