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【九森信造】「っぽい」が「本格」になる方法:ライムスター論

   ↑  2014/01/01 (水)  カテゴリー: 九森信造
皆さん、日本語でラップしたことありますか?

今回は、前回の「2013年は『っぽい』の年」を踏まえた上で、日本語ラップのパイオニア「ライムスター(宇多丸・MUMMY-D・DJ JIN)」のリリックを見ていくことにしましょう。

オレにゃ意地がある目指すオリジナル

日本語ラップに対する批判として「日本には黒人差別のような環境がないからラップは根付かない」というものがあります。確かに、ラップを語るうえでは、その担い手であった黒人もといアフリカ系アメリカ人の存在は欠かせないでしょう。

しかし、MUMMY-Dはこう歌います。

「次の生け贄はミスター食わず嫌い
端から耳貸す気ないくせに何かとケチつけるお前とケリツケル
いわく『日本にゃHIPHOPは根付かねぇ!
日本人がラップするとはいけすかねぇ!
何の意味がある?この尻軽。所詮無理がある!』
と無意味がるが
オレにゃ意地がある目指すオリジナル
シェリルみたいにI got to be real」

「ウワサの真相feat.FOH」『ウワサの真相』


私も90年代後半から日本語ラップを好んで聞いていますが、黎明期はダジャレと言われても仕方ないような韻の踏み方やお経のようなフロウもあったかと思います。

それでも彼らは、ラップの魅力に夢中になり、ラップに人生を賭けてきたからこそ、そこに「意地」を張っているのです。


ウワサの真相


神は天にしろしめし世はすべてこともなし

そうして、彼らが切り拓いた日本語ラップの市場が成長すると、ブラウン管(今なら液晶か)に取り上げられるラッパーとそうでないラッパーが分かれることになりました。

ここ最近までは、ライムスターも「そうでないラッパー」だったといえるでしょう。DJ JINはこう歌います。

「半ば本格派 半ば道楽か
勝手次第な好事家なくばかつて生まれた娯楽は無駄
だがその興味の源泉は局地局地に伝染し
無償は承知の原点に立ち返り独自に喧伝す
誰がために誰がためもなくただはかなく身を焦がす」

「ザ・グレート・アマチュアリズム」『グレイゾーン』


なまじキャリアを積んで「本格派」というマイナーに甘んじようとも、彼らは自分のラップを貫いてきたのです。さらに、MUMMY-Dはこう歌います。

「イカすブラウン管なかのナンパラッパーが
吹き出しちゃうほど直球で
左様、世の中そんなに甘くはない
が言わしてもらう決してためらわない
オレにとっちゃこいつは金じゃない
Checkしなこの至高のアマチュアナイト」

「ザ・グレート・アマチュアリズム」『グレイゾーン』



グレイゾーン


このアマチュアリズムは、数年の活動停止(2007年~2009年)から復帰したライムスターにも受け継がれていました。

「声が無いならリズムで勝負
リズムが無いならイズムで勝負
早口・オフビートすべて試した
決してならなかった誰かの手下」

「K.U.F.U.」『マニフェスト』



マニフェスト


誰もいわねぇからぶっちゃける

その一方で、宇多丸師匠は、社会に対して言いたい放題の姿勢を貫きます。

「オレだってキレそう
ほんとイヤな世相
なんでああ無節操
ワイドショーは消そう
やたらと血相変え吊し上げ
そう『地獄への道は善意で舗装』」

「H.E.E.L.」『マニフェスト』


このように、宇多丸師匠のリリックには「そういう言い方があるんだな」と膝を打つことがよくあります。

「あの半島の方に核弾頭
足元にたくさんの活断層
まるで崖の上に建つダンスフロア
で俺たち踊らすバブル残党」

「逃走のファンク」『Heat Island』


この作品の発売が2006年、すなわち東日本大震災はおろかリーマンショックも起きていない時期だというのは、驚くべきことだといえるでしょう。


HEAT ISLAND


決して譲れないぜこの美学

活動休止前の2007年、武道館ライブでMUMM-Dはこう語っています。

「原点回帰って言葉があるけど俺らにね原点回帰はない!
何でかって言うと未だに原点にいるから
原点回帰のアルバムですなんてそんなものは出しませんよ
そんなこと言うんだったら毎回原点から動いてない
毎回原点回帰のアルバムを俺ら作ってきてる訳
俺はそれをすげえ誇りに思うんだよね」



原点回帰とは「自己対話」のことだと思います。社会を批評するにしろ、何かをメッセージするにしろ、自己対話ができていなければ、作品はつまらないものになるでしょう。

逆に、自己対話がしっかりできていれば、普遍的な作品を生み出すことができるのではないでしょうか。

「決して譲れないぜこの美学ナニモノにも媚びず己を磨く
素晴らしきろくでなしたちだけに届く轟くベースの果てに」

「B-BOYイズム」『マニフェスト』


そうです、己を磨き続けるしかないのです。最初は、黒人文化の真似をした「ラップっぽいもの」でした。しかし、長い時間をかけて磨き続けるなかで「本格的な日本語ラップ」を生み出してきたのです。

同じように、「っぽいもの」を磨き続ければ「本格的なもの」になります。そして、それには時間がかかるのです。日本語ラップも20年かかりました。

2013年は『っぽい』の年」だとすると、2014年は「本格的なもの」を生み出すためのスタートとなるでしょう。

「言ったなボウズ許しはしないぜ三日坊主!君の!」

(記事編集) http://buraihamegane.jp/blog-entry-51.html

2014/01/01 | Comment (0) | Trackback (0) | HOME | ↑↑↑ |

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