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【九森信造】『就職戦線異状なし』~若者の群像劇と就職活動と~

   ↑  2015/02/22 (日)  カテゴリー: レコメンド
まだ、就職活動が就活と略されていなかった頃、「就職戦線」を冠した映画がありました。その名も『就職戦線異状なし』です。


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フジテレビの全盛期

製作はフジテレビ。この頃のフジテレビは、今のお台場ではなく河田町にありました。フジテレビ製作の27時間テレビで流されるような昔のVTRによく登場します。

例えば、タモリ・たけし・さんまのBIG3による河田町駐車場での大騒動はあの頃のフジテレビを象徴する出来事だったといえるでしょう。土曜日の8時にはめちゃイケではなく、さんまやたけしのひょうきん族やウッチャンナンチャンのやるやらが放送され、「売れている芸人はみんなフジテレビにいる」といわれた時代でした。

もちろん、ドラマも全盛期でした。『就職戦線異状なし』が上映された1991年の1月に、「月曜の夜は女性が街から消える」というトレンドを生み出し、月曜日の9時という時間枠を「月9」ブランドにした『東京ラブストーリー』、4月からは同じ時間帯に『101回目のプロポーズ』と、名実ともに伝説的なドラマを生み出していた時期でもありました。

したがって、この頃のフジテレビが製作し、バブル期の就職活動の狂乱を描いた映画が豪華絢爛にならないはずがありません。

主演は、『東京ラブストーリー』で主演を務めた織田裕二、ヒロインは「高校教師」で一躍ブームした仙道敦子。今では緒方直人と結婚しています。和久井映見、的場浩司、羽田美智子、坂上忍といった、今でも一線で活躍する俳優陣。全員が早稲田大学生という設定で行われる就職戦線協奏曲です。

就職戦線に参戦

オールスター映画は、キャストを集めたことだけで満足してしまい、ただただその出演者の丁々発止だけで時間を費やしてしまうことがあります。

本作も脚本がしっかりしていたとまではいいませんが、就職戦線を通じて描きたかったことは伝わるのではないかと思います。それは「リアル」な学生生活と「バーチャル」な就職戦線です。

本編では、歩けば内定が取れる時代に、あえてマスコミや広告代理店という人気の職種に挑戦する学生を描いており、出てくる企業はメディア関係がほとんどです。権利関係や諸々の業界の力学もあってか、本編では学生が就職する企業に関しては、伏字が使われています。テレビA日やS潮社など。ただ、建物の外観などはオリジナルを用いていることから、大体察しはつきます。

その中で象徴的なのは、就職活動をする学生が「自分vs企業」という構図を作り出していることです。フジテレビの面接や電通の試験という言葉に表れるように、企業を人格化し、企業に立ち向かう自分をセルフプロデュースしていきます。

RPG(ローブプレイングゲーム)で例えるなら、リクルートスーツという「戦闘服」、就職情報誌や書類の書き方といった「装備」を持って、合同説明会や模擬面接といった「ダンジョン」で経験を積み、就職偏差値(映画本編で登場する指標)が低い「小ボス」から偏差値の高い「ラスボス」までを戦いぬくわけです。その中に、仲間との協力や裏切りもあるかもしれません。

不思議なことに、彼らは自分の設定した「ラスボス」の就職偏差値が高ければ高いほど、それだけで、自分自身がすごいものであるかのように勘違いしてしまうようです。よくよく考えてみれば、私が就活していたときにも似たような傾向がありました。

しかし、現実はそう甘くはありません。

就職戦線から撤退

就活の終わりは第一志望の企業からの内定、あるいはそれ以外からの内定、または就職浪人、進学といったさまざまなカタチがあるでしょう。

本編では就活という「自分vs企業」のある意味「バーチャル」な戦いに、学生たち自身がとても「リアル」な理由やきっかけで終止符を打っていくことになります。

自分が選ぶ

物語のクライマックスに、こんな台詞があります。

「君が働きたい会社を選ぶんだよ」


現代にも共通していえることかもしれませんが、就職活動において、学生は「企業に選んでもらう」という気持ちが強いように見えます。

そのために、相手に評価される自分を作り上げ、表現し、毎回の面接後の連絡を震えて待たなければなりません。違う業種を受ける際は、また、別の自分を作り出さなければいけない。そんなことばかりしているから、3年も経たないうちに辞めてしまう若者も増えたのではないでしょうか。

時代を映す鏡

この作品のよさは、就職活動を学生群像劇として切り取ったこと以外にもあります。1991年の時代を生きる若者のアイテムや言葉、時代背景などを贅沢に取り入れています。

最近でいえば「モテキ」に取り込まれていますが、若者の周辺は絶えず変化しており、常に時代を映す鏡です。一種の記録映画としての性格を、そのエンターテイメント性の中に多分に含んでいる点と、あの日の学生気分を楽しめるという点で、この映画は1粒で2度美味しい映画というわけです。

「企業に選ばれることが戦いの勝利」という就職戦線の大前提は今もさほど変わっていないのではないでしょうか。25年前のバブルの頃の狂乱と大前提が変わっていないということは、失われた20年のあいだ、就職活動は根本のところで何も変わってこなかったということでしょう。

この映画を1つの羅針盤として「企業に選ばれる就職戦線」から離脱する勇気を持つのも1つかも知れません。そういったこともエンターテイメントとして示唆してくれる作品、オススメです。

(記事編集) http://buraihamegane.jp/blog-entry-77.html

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