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【九森信造】枚方という呪/京都と大阪のあいだ【枚方三部作】

   ↑  2015/04/18 (土)  カテゴリー: 九森信造
映画『陰陽師』において、安倍晴明は、名前は呪(しゅ)であり、名付けることは、その名前の呪にかける、すなわち、その名前の持つ運命を与えることだといいました。

大阪第4の市である枚方市も、この「枚方」という名前を宿してから、名前の持つ運命を引き受けることになりました。


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まず、枚方という名前は、江戸時代に栄えた東海道56番目の宿場町、枚方宿(ひらかたしゅく)から取られたものです。この枚方宿は、現在の京阪枚方市駅から枚方公園駅まで続く街道筋に設置されていました。

人工的に生まれた宿場町

この枚方宿は、豊臣秀吉が築いた堤防「文禄堤」が、伏見城から大阪城までを結ぶ街道(京街道)として用いられるようになったことで発展しました。その後、徳川幕府の下で東海道の宿場町として指定されたのです。

「文禄堤」は、今で言えば公共事業にあたり、その上で生まれた枚方宿は人工的に作られたものだといえます。しかも、舟運が発達した淀川に沿っているため、上流の京都から下流の大阪へは船を利用する旅行者が多く、枚方宿は上りの利用者がほとんどの「片宿」となりました。

一方で、幕府指定の宿場町であるため、大名行列や幕府の役人に対しては非常に安価でサービスを提供するよう強いられ、慢性的な財政難に陥りました。

遊郭が支えた宿場町

その財政難に対して、宿場町の商人たちが何もしなかったわけではありません。舟に乗ったお客も取り込み、利用者を増やすためのアイデアが三十石船の唄に隠されています。

ここはどこじゃと 船頭衆に問えば 
ここは枚方 鍵屋浦
鍵屋浦には 碇はいらぬ 
三味や太鼓で 船止める


鍵屋というのは、今では歴史資料館として改修され、枚方宿の当時の様子を偲ばせる観光スポットとなった料亭のことです。

三味線や太鼓で船を止める、端的に言えば、芸者さんや遊郭が旅行客の足を止めていたのです。このことは、当時の枚方宿を利用した外国人の日記にも残っています。

ちなみに、第2部で取り上げたTSUTAYAの名前は、創業者の家が、かつて枚方宿の置屋であり、その屋号が「蔦屋」だったことから取られています。

宿場町のしわ寄せ

光があれば、影がある。枚方宿の活気を盛りたてるために作られた遊郭ですが、その遊女たちにまつわる、悲しい民話が残っています。

枚方宿の街道から少し山手のほうに入ったところにある台鏡寺。そこにいらっしゃる夜歩き地蔵様。地蔵様なのに足が汚れていることからその名前が付けられました。

どうして夜歩きをしていたかといえば、置屋に囲われた遊女たちがこの地蔵様を心のよりどころにして、夜な夜なお参りに来ており、その気持ちに寄り添うため、地蔵様も夜な夜な歩いていたからだそうです。

財政難の宿場町、そのしわ寄せが弱い立場の人々に押し寄せていたのです。

焼き討ちされた枚方寺内町

もう少し時代を遡りましょう。枚方宿に指定されたのは、岡村、岡新町、三矢、泥町でした。それよりも前に枚方の名前を冠していたのは、街道筋より一段高い地区でした。旧国名でいえば茨田郡枚方村、今の枚方上之町、枚方元町あたりになります。

この枚方元町には、浄土真宗大谷派の願生坊という寺院があります。戦国時代に入るまではこの願生坊(当時の名は順興寺)を中心とした寺内町として栄えていました。この願生坊は真宗の中興の祖である蓮如上人の息子、実如によって1514年に建立されました。

当時、浄土真宗の勢力は武将を脅かすほどであり、その中心が石山本願寺でした。今では、織田信長に焼き討ちされ、跡地に大阪城がそびえています。願生坊は当時、石山本願寺並の権限を与えられており、寺内町には大きな油屋が商売を営んでいました。

織田信長は、願生坊を焼き討ちしませんでしたが、油屋を焼き討ちし、その跡地に信長が懇意にしていた日蓮宗の大隆寺が建立されました。その大隆寺の改装工事の際、大量の油壺が見つかったのは知る人ぞ知る事実です。おそらくは、願生坊の勢力を衰えさせる狙いがあったのでしょう。

京都と大阪のあいだ

第1部で取り上げた、死者の供養の意味合いを持つ花火も、上流に京都という都があったがゆえに生まれました。さらに、現代につながるTSUTAYAも京都と大阪に挟まれた宿場町の遊郭から生まれました。

「枚方」という呪は、京都と大阪という二大都市の政治の狭間で翻弄され、時代の矛盾を抱えながらも、自分で立ち上がる努力を続けていく宿命を背負うことではないでしょうか。

そのメンタリティを歴史とともに伝えていくことこそ、真の意味での「まちおこし」なのだと思います。皆様、三部作お付き合いいただきありがとうございました。

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