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【エトジュン】九鬼周造『「いき」の構造』を読む

   ↑  2015/09/06 (日)  カテゴリー: エトジュン
「Xとは何か」に答えることは出来ない。しかし、「何がXか」に答えることは出来る。前者は言葉を定義することであり、後者は言葉を分析することである。

さて、言葉を分析することについて、九鬼周造の『「いき」の構造』を紹介しよう。本書は「いき」とは何かに答えた本ではなく、何が「いき」かに答えた本である。言い換えれば、「いき」を定義した本ではなく、「いき」を分析した本である。


「いき」の構造 他二篇 (岩波文庫)


まず、九鬼は「『いき』を単に種概念として取扱って、それを包括する類概念の抽象的普遍を向観する『本質直観』を索めてはならない。意味体験としての『いき』の理解は、具体的な、事実的な、特殊な『存在会得』でなければならない」(pp.19-20)という。

ここで、種概念と類概念の関係をベン図で表すと図1のようになり、論理的に表すと「種→類」となる。九鬼は「いき」を種概念としてではなく、類概念として捉えなければならないというが、それはすなわち「いき→A」(図2)という抽象的な本質Aを求めるのではなく、「A→いき」(図3)という具体的な存在Aを求めなければならないということである。

図1図2図3

また、九鬼は「我々はまず意識現象の名の下に成立する存在様態としての『いき』を会得し、ついで客観的表現を取った存在様態としての『いき』の理解に進まなければならぬ」(p.20)というが、今回は言葉を分析することに着目するので、意識現象としての「いき」だけを扱うことにしたい。

さて、九鬼は「『いき』の内包的構造と外延的構造とを均しく闡明することによって、我々は意識現象としての『いき』の存在を完全に会得することができる」(p.22)という。

これは「A→いき」(図3)におけるAの特徴(いきの内包)とAの範囲(いきの外延)を明らかにすることで、意識現象としての「いき」を捉えることができるということである。

まず、内包について、九鬼は「垢抜けして(諦)、張りのある(意気地)、色っぽさ(媚態)」(p.32)が「いき」であると結論する。これをベン図で表すと図4のようになり、論理的に表すと「諦かつ意気地かつ媚態→いき」となる。

図4図5

ここで気になるのは、「A→いき」(図3)ではなく「AかつBかつC→いき」(図5)という結論になっていることだが、これについて九鬼は「すべての思索の必然的制約として、概念的分析によるのほかはなかった」(p.95)と反省している。

すなわち「『媚態』といい、『意気地』といい、『諦め』といい、これらの概念は『いき』の部分ではなくて契機に過ぎない」(p.97)のであり、これらの概念の集合としてしか「いき」を捉えることができないのである。

また、外延について、九鬼は「『いき』と『いき』に関係を有する他の諸意味との区別を考察して、外延的に『いき』の意味を明晰ならしめなければならない」(p.35)という。

具体的には「人性的一般性かつ対自的かつ有価値的→上品」、「同じく反価値的→下品」、「人性的一般性かつ対他的かつ積極的→派手」、「同じく消極的→地味」、「異性的特殊性かつ対自的かつ有価値的→意気」、「同じく反価値的→野暮」、「異性的特殊性かつ対他的かつ積極的→甘味」、「同じく消極的→渋味」という分析を行っている。

この分析によれば、たとえば「上品」と「意気」の区別を「人性的一般性」と「異性的特殊性」の対立として、あるいは「意気」と「野暮」の区別を「有価値的」と「無価値的」の対立として捉えることができる。

さらに、以上の対立構造を直六面体で表すと図6のようになる。九鬼によれば「この直六面体の図式的価値は、他の同系統の趣味がこの六面体の表面および内部の一定点に配置されうる可能性と函数的関係をもっている」(p.53)。

図6

たとえば「『さび』とは、O、上品、地味のつくる三角形と、P、意気、渋味のつくる三角形とを両端面に有する三角柱の名称である」(p.55)。

さて、九鬼によれば、内包的には「諦かつ意気地かつ媚態→いき」であり、外延的には「異性的特殊性かつ対自的かつ有価値的→意気」である。

いずれにせよ九鬼は「AかつBかつC→いき」(図5)という図式を用いることで、概念の集合として「いき」を捉えており、それが「いき」を分析するということなのである。

(記事編集) http://buraihamegane.jp/blog-entry-90.html

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